ドラフトの通信簿

NPBドラフトにおける、各球団の指名結果を採点します。

ドラフト1位指名<埼玉西武ライオンズ編>

今回見ていくのは、埼玉西武ライオンズの1位指名です。

2008 中崎   15.2
2009 菊池 1172.1
2010 大石  138.1
2011 十亀  842.1
2012 増田  390
2013 森   594
2014 髙橋  345
2015 多和田 434.1
2016 今井  214
2017 齋藤   27.1
2018 松本   85.1
2019 宮川

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで4258.2Pになります。
野手1人に対して投手11人と、圧倒的に投手多めの比率です。


唯一の野手は、正捕手の森です。2018年19年のパリーグ連覇の原動力で、2019年には首位打者とMVPのタイトルに輝きました。勤続疲労が原因なのか今季は不調に陥っていますが、NPBにいる捕手の中ではナンバー1の打力の持ち主でしょう。


投手11人の中では、中崎と斎藤が地味にハズレでしょうか。派手にハズレだったのは大石です。ドラフトでは6球団競合の大注目選手だったのですが、1年目の4月に肩を故障して以来、実力が発揮できなかったようです。


入団後数年は伸び悩んだものの、飛躍を遂げて念願のMLBへと旅立った菊池はもちろんとして、ローテを支えた十亀、安定したクローザーの増田は充分アタリですね。また、現在は自律神経失調症で一軍の舞台からは遠ざかっていますが、2018年には16勝を上げた多和田もアタリです。そして、現在は、髙橋光成・今井・松本の3人の若い投手が、ライオンズのローテにしっかりと入っています。狙い通りの指名になっていますね。

ドラフト1位指名<東京ヤクルトスワローズ編>

今回見ていくのは、東京ヤクルトスワローズの1位指名です。

2008 赤川  319.2
2009 中澤  265.2
2010 山田 1068
2011 川上    0
2012 石山  470
2013 杉浦  194
2014 竹下    2.2
2015 原   383
2016 寺島    9
2017 村上  119
2018 清水   26
2019 奥川  

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで2857Pになります。

野手3人に対して投手9人と、投手多めの比率です。


やはり、山田哲人と村上という、侍ジャパン級の能力をもつ2人が光ります。山田が外れ外れ1位(斎藤佑樹×、塩見×)、村上が外れ1位(清宮×)なので、スワローズはクジを「外す」という幸運に導かれてこの2人を手に入れたのですね。こういうのもドラフトのおもしろさです。


投手力不足がこのチームの泣き所ですが、投手多めの指名比率はそんなチーム事情を反映しています。が、それにしても当たり率が低い。赤川・中澤・杉浦はかなり期待されていましたが、ドラ1の期待には応えられたと言えないでしょう。原ももう一皮剥けてほしいところで、このままだと厳しい。


石山はクローザーとしてブルペンを支え、チームになくてはならない存在になりました。そして、寺島と清水も今季はリリーフとして一軍の試合で投げています。しかし、この2人には先発として育ってほしいという期待があると思うんですよね。このままずっとリリーフだとチームは苦しい。3球団競合の末に獲得した奥川に期待しているのはスワローズファンだけではないと思います。

ドラフト1位指名<横浜Denaベイスターズ編>

今回見ていくのは、横浜Denaベイスターズの1位指名です。

2008 松本  119
2009 筒香  977
2010 須田  309
2011 北方    0
2012 白崎  184
2013 柿田    0
2014 山崎  296
2015 今永  538
2016 濱口  300.2
2017 東   192.1
2018 上茶谷 134
2019 森

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで3050Pになります。

野手4人に対して投手8人と、比率自体は標準的です。


順番に見ていくと、松本から北方までがTBS時代のドラフトです。筒香は確かに大当たりでしたが、彼が戦力になるまでは時間がかなりかかりました。即戦力投手を積極的に獲得するのが手っ取り早い強化法だったのではないかなと今にしてみれば思います。(もっとも、そうして見込んだ須田がイマイチだったので、スカウトの眼力自体が曇っていたのかもしれませんが。)


そして白崎以降が横浜Denaベイスターズとしてのドラフトです。白崎は、村田が抜けた穴埋めを期待して獲得したのでしょうが、イマイチでしたね。そして、2年目以降は徹底して即戦力の大卒投手を獲得していきます。柿田こそは残念な結果に終わりましたが、他は軒並み期待に応え、チーム力を大きく押し上げました。これが低迷しているチームの再生の、最適解の1つでしょうね。


実は、2018年のドラフトでは1位で小園を狙ったのですが、外してしまいます。ここでドラフト方針の転換を感じました。チームの再生が進んだので、手薄な二遊間で長くチームの柱になれるような選手を欲したのですね。そして、2019年には前年度からの狙いをブレることなく貫き、高卒内野手の森を指名します。さて、今年も引き続き将来に向けた投資を行うのか、また方針転換して即戦力に向かうのか。今年のドラフトの注目点の1つです。

ドラフト1位指名<広島東洋カープ編>

今回見ていくのは、広島東洋カープの1位指名です。

2008 岩本  240
2009 今村  497.1
2010 福井  568.1
2011 野村 1036.2
2012 高橋   17
2013 大瀬良 783
2014 野間  256
2015 岡田  376
2016 加藤   37.1(注:現在の登録名は「矢崎」)
2017 中村    0
2018 小園   40
2019 森下

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで3851.2Pになります。

野手5人に対して投手7人と、他チームと比べると野手多めの指名になっています。特に投手の方については、高卒ではなく大卒を好む指名ですね。


こうして見ていると、岩本、高橋大樹、野間あたりの野手は、ドラ1の期待には応えられていない感じですね。高橋はこの年の2位が鈴木誠也ですので、彼と比べるのは気の毒なのですが、ファームでは好成績を残しています。もう少し出番があってもいいのではと思うのですが。野間は丸が出て行ったときに、入れ替わりでレギュラーを取ってしまうのかと思ったのですが、なかなか期待通りにはいかないものです。


今村は2年目にリリーフに転向すると、以降はずっとブルペンを支え続け、チームのリーグ3連覇にも貢献しました。 福井・野村・大瀬良は入団時に既に高い完成度がありましたが、入団後も成長し、先発ローテとして活躍し続けました。今季、森下が新人王獲得を有力視される大活躍ですが、これらの先輩に続いていけそうな雰囲気です。それと比べると、ちょっと物足りないのが岡田と加藤。特に岡田は1年目には凄い投手になりそうな雰囲気があったのですがね…


中村と小園では、小園の方が有望な感じでしょうか。正遊撃手の田中が31歳ですので、そろそろポジションが空きそうな感じもあります。中村の方は、正捕手の會澤は32歳ですが、ライバルの坂倉の方が中村より良さそうです。このままこのチームで捕手で勝負するのは厳しそうな感じがあります。

ドラフト1位指名<中日ドラゴンズ編>

今回見ていくのは、中日ドラゴンズの1位指名です。

 

2008 野本  185
2009 岡田  360.1
2010 大野 1049.2
2011 高橋  459
2012 福谷  221.2
2013 鈴木翔  87.2
2014 野村    2.2
2015 小笠原 337.1
2016 柳   274.1
2017 鈴木博  74
2018 根尾    0
2019 石川

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで3051.2Pになります。
野手4人に対して投手8人と比率自体は標準的です。特に、2012年から17年までは6年連続で投手を1位指名しました。一転して、18年19年は高卒野手を連続で指名しています。今年も高卒野手指名でしょうか。


こうして見ていると、野本、鈴木翔、野村あたりは、ドラ1の期待には応えられなかったという感じですね。岡田はどうでしょうか、2019年~20年はクローザーを務めた時期もありますが、それほど安定感のあるリリーフという感じはしません。


大野は2015年から3年連続で2ケタ勝利しますが、そこから成績を落として行きます。ところが2019年に復活すると、今季も圧倒的なピッチングを披露しています。FA権を得たことで他球団への移籍もうわさされれますが、権利行使となれば争奪戦ですね。


高橋周平は入団7年目の2018年に初めて規定打席に到達し、以降はチームの主軸になった感があります。平田もそうでしたが、ドラゴンズは高卒野手の育成に結構手を焼きますが、辛抱強く育て切る感じがします。根尾や石川は手がかからずに育つのか、やはり手がかかるのか?楽しみですね。


福谷は入団後からリリーフに定着し、2年目の2017年には72試合に登板して防御率1.81と見事な成績を残りましたが、この登板過多の影響なのか以降は冴えないシーズンが続きます。これが2019年に先発転向すると、今季はチーム内で大野に次ぐ2番手にまで成長しました。鈴木博も同じく入団後からリリーフで、クローザーを務めたこともありますが、今は信頼を失っています。福谷のように再生できるかどうか。


小笠原と柳はエースになれるポテンシャルを感じます。2人ともまだまだですが、伸びしろは豊富なので、成長に期待できそうです。

ドラフト1位指名<阪神タイガース編>

今回見ていくのは、阪神タイガースの1位指名です。

  

2008 簫     8.1
2009 二神   40.2
2010 榎田  499
2011 伊藤  154
2012 藤浪  803
2013 岩貞  478.2
2014 横山   33.2
2015 髙山  313
2016 大山  281
2017 馬場   12
2018 近本  159
2019 西

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで2783.1Pになります。
野手4人に対して投手8人と比率自体は標準的です。2013年までは伊藤以外は投手、2014年以降は馬場と西以外は野手(馬場は投手ですが、清宮を外し、安田を外しての、指名でした。)と、はっきりと傾向が変わりました。


簫、二神、伊藤隼は、鳴かず飛ばず。スカウトは一体何を見ていたんだ?と疑いたい、大失敗の指名です。榎田は即戦力の期待に応えて1年目から活躍しますが、3年で息切れ。ライオンズに移籍して1年目こそは11勝をあげる大活躍でしたが、2年目以降は苦しい。


藤浪は1年目から順調に成長していくのですが、4年目に極端な制球難に陥り、2019年シーズンは1登板しかできませんでした。今季は先発としてスタートするも二軍落ち、その後複数選手の新型コロナ感染による大量の選手の入れ替えを機に昇格後、リリーフとして起用されると勝ち継投パターンにハマりました。来季以降、リリーフで行くのか、先発に復帰するのか、起用法が注目されます。(個人的には、普通にセットアッパーやクローザーにしてしまうのではなく、オープナーとして週2回先発させるなど、おもしろい起用法に期待したいです。)


岩貞は、好調時にはこれは間違いのない先発投手だなというピッチングを披露するのですが、継続的な安定性に欠けました。今季は開幕は先発としてスタートするも、シーズン途中からリリーフに転向、リリーフとしてはセットアッパーの岩崎と遜色のないパフォーマンスで、適性はありそうです。ただ、藤浪・岩貞と、左右のエースになる期待のあった逸材を、先発として育てきれずにリリーフにしてしまうところが悲しい。開き直ってブルペンを大充実させ、MLB流にブルペンデーを取り入れてはどうかなと思います。


横山は左肩手術で育成落ちを経て、今季2年ぶりに支配下登録されました。復帰後のピッチングを見ましたが、手術前のような輝きは感じませんね。まだ26歳ですから、今後の成長に期待したいです。


さて、2015年以降には、生え抜き野手の育成に本気になっていきます。このチームは生え抜き野手がまともに育たないことを延々と批判されていますが、育ててモノになるような野手をドラフトで獲得していない、投手偏重の指名が1番の問題であったと思います。髙山は新人王を獲得するもその後は苦しいシーズンを送っていますが、大山と近本はチームの柱に成長していきました。

ドラフト1位指名<読売ジャイアンツ編>

前回の更新から、半年以上も経過してしまいました。もうすぐ今年のドラフトが行われますね。お休みしていたこちらのブログを再開したいと思います。

これまで、年度ごとに各チームのドラフト指名を振り返ってきましたが、ここからは順位ごとに各チームのドラフト指名を振り返っていきます。

ポイントについては、こちらを参照してください。

 

koryusai.hatenablog.com

 

まずは、読売ジャイアンツの1位指名から見ていきましょう。

  

2008 大田  476
2009 長野 1316
2010 澤村  834
2011 松本    0
2012 菅野 1222.2
2013 小林  337  
2014 岡本  327
2015 桜井  139.2
2016 吉川   99
2017 鍬原   46.1
2018 高橋   93
2019 堀田

 

1P=1安打=1回とすると、ドラフト1位指名選手が獲得したポイントは、トータルで4890.2Pになります。
野球好きならみんなが知っている選手が多いです。日本一の人気チームのドラ1ということを差し引いても、きちんとモノになる選手をドラ1指名できている証拠でしょう。野手5人に対して投手7人と、他チームと比べると野手多めの指名になっています。


大田・長野・澤村はすでにこのチームにはいません。ドラ1選手をトレードやFA人的補償で外部に出すのはマイナス、というイメ―ジが日本にはあったように思います。しかし、この3人が移籍先でも活躍している姿を見ると、このようなマイナスのイメージが変わっていくのではないかなという気がします。原監督の考えなのですかね、懐の深い指導者だと思います。


松本竜也は、賭博関与という不名誉な形でチームを去りましたので、論外。


菅野は凄い投手になりました。試合を制圧できる力を持っている先発投手は今のNPBで唯一でしょう。これだけ圧倒的だとMLB行きの可能性がチラついてきます。


小林は打力を批判されながらも堅実な守備力を武器に、正捕手にまで成長しました。が、今季は大城や炭谷に押されて出番がありません。また、岸田という期待の若手も台頭してきています。FAを待たずに、トレードでチームを去るのかもしれません。とすると、2008~13までのドラ1が移籍することになりますか。これは他のチームにはなかなかないことだと思います。


岡本がいればこの先10年は四番に困ることはありませんね。日本を代表する打者にまで成長しました。岡本のようなこれと見込んだ選手を育て切るあたり、このチームの育成システムの健全さを感じます。吉川は怪我の多い選手ですが、年々成長しているのを感じます。坂本に代わって吉川が遊撃手のレギュラーになることはあるのでしょうか。吉川の成長ストーリーもまた楽しみです。


桜井、鍬原あたりはちょっと地味ですかね… この2人に比べると、高橋の方に可能性を感じます。

(追記)鍬原と堀田の育成枠落ちのニュースが入ってきました。鍬原はわずか3年、堀田に至っては入団後すぐにトミージョン手術となり登板がないままです。近年のドラフト指名戦略に狂いが生じていますね。