ドラフトの通信簿

NPBドラフトにおける、各球団の指名結果を採点します。

2017年ドラフト<集計編>

さて、チーム毎に振り返ってきた2017年ドラフトですが、獲得ポイント順に並べると次の通りとなります。(ポイントの横は、獲得した主要選手です。カッコ内はまだ1軍で目だった結果は出していないものの、期待値の高い選手です。)

 

オリ 523   田嶋・鈴木・福田
De 466.2 東・神里(楠本・中川)
SB 405.2 高橋・大竹・周東(増田・尾形・リチャード)
読売 320.2 大城・田中・若林(北村・岸田)
ロッ 272   藤岡(安田・菅野・和田)
ヤク 264   村上・大下(塩見・宮本)
阪神 187.1 髙橋
ハム 177.2 清宮・西村
中日 165.2 鈴木・山本
楽天  89.1 (山崎)
西武  83.2 なし
広島  69.2 遠藤(中村・ケムナ)

 

この年は清宮を中心に回ったドラフトでした。ドラフト前には「高校BIG3 清宮幸太郎・中村奨成・安田尚憲」のドラフトと言われていましたが、ふたを開けてみると7球団が清宮を指名したところからみて、スカウティングの段階で評価されたポテンシャルは突出していたのでしょう。スター性は文句なしですが、故障歴からみてそこまで集中しないだろうと思っていたので意外でした。その後2シーズンが経過しましたが、今のところこの年の高卒選手でNO1の成績を記録しているのはBIG3ではなく、スワローズの村上です。ドラフト前にはさほど注目されていないように見えましたが、外れ1巡目で安田と同じく3球団競合となったことから、スカウトにはちゃんと評価されていたのですね。


また、こうした高卒野手には目もくれず、即戦力級の左腕投手の確保に動いたのが、オリ・西武・Deの3チーム。結果的には、東がいきなり新人王を獲得しますが故障、田嶋も通年で活躍はできておらず、斎藤はまだこれからの投手。長い目で見て誰の獲得が成功だったのかも見どころです。


獲得ポイント的には、この前年からの流れとおり、バファローズベイスターズが今のところの勝ち組といえるでしょう。注目は、前年までイマイチなドラフトが続いたホークスが3位につけていること。ドラフト戦略を見直したのでしょうか。尾形とリチャードが1軍で結果を出し始めるのなら、大成功ドラフトになりそうな雰囲気があります。

2017年ドラフト<野手ファーム成績編>

この年度から、1軍成績だけではなくファーム成績の方もかなり見たので、まとめておこうかと思います。といっても、野手の方だけです。(投手は好調ならばすぐに1軍昇格させ、まずは中継ぎでお試し起用することが簡単であるのに対して、野手は1軍で代打で数打席与えるよりも2軍で経験値を与え続ける方が重要であり、そう簡単に1軍昇格とはならないからです。) 
ファームで2019年シーズンに300打席以上与えられた選手を中心に、名前・球団・指名順位・打席数・OPS・BB/Kの順に記載しており、BB/Kの値でソートしています。
BB/K、つまり1回三振するまでに何個の四球を取るかを示す数値で選球眼の指標ですが、この数値が高いほど1軍で通用する可能性が高いと言われており、この数値を重要視しています。(OPSが高くてもBB/Kが低くミスの多い選手は、「二軍の帝王」化する可能性が高いです。)

 

<高卒選手>
山崎 楽天 3位 308 .675 .952
安田 ロッ 1位 529 .804 .670
増田 SB 3位 383 .764 .519
西巻 楽天 6位 381 .631 .405
西川 西武 2位 418 .606 .354
中村 広島 1位 112 .725 .333
難波 ハム 4位 358 .417 .265

 

高卒選手では、イーグルスの山崎に大きな可能性を感じます。また、マリーンズの安田も順調に育っていますね。ホークスの増田はまだこの2人は1歩及ばない感じでしょうか。また、打席数は少ないものの参考のためにカープの中村奨成を載せておきました。1軍で出るには選球眼を磨かなくてはならないようです。

 

<高卒社会人選手>
岸田 読売 2位 284 .797 .705
宮本 De 7位 307 .673 .172

 

高卒社会人選手では、ジャイアンツの岸田が捕手というポジションを考えると魅力的で、二軍においておくにはもったいない成績です。

 

<大卒選手>
宮本 ヤク 6位 334 .736 .927
北村 読売 4位 457 .843 .843
楠本 De 8位 289 .837 .615
島田 阪神 4位 375 .618 .587
熊谷 阪神 3位 421 .606 .353

 

大卒選手では、スワローズの宮本丈の成績が良い。失礼ながら全く注目していない選手でしたが、スワローズ内野手の「宮本」は宮本慎也だけではないことを覚えておこうと思います。また、ジャイアンツの北村はそろそろファームではやることがないんじゃないかなという気がします。

 

<大卒社会人選手>
塩見 ヤク 4位 309 1.009 1.000
菅野 ロッ 4位 333 .839 .813


大卒社会人では、塩見と菅野は今年はもう1軍にいないとまずい選手でしょうね。  

2017年ドラフト<広島東洋カープ編>

この年のカープの指名は以下の通りでした。
(選手名の横の数値は、2019シーズン終了までの通算成績になります。)
そろそろ、一軍成績だけで語れる年ではなくなってきたので、2軍成績にも言及してまいります。

 

1位 中村奨成  0安打(2球団競合)
2位 山口翔  26回
3位 ケムナ誠  1回
4位 永井敦士  0安打
5位 遠藤淳志 42.2回
6位 平岡敬人  0回
育1 岡林飛翔  0回
育2 藤井黎來  0回
育3 佐々木健  0回

 

1P=1安打=1回とすると、この年のドラフトはトータルで69.2Pになります。


1位の中村は、夏の甲子園で大会を通じて6本塁打を記録し、清原和博の記録を塗り替えたことで一躍名前が知られるようになります。2球団競合の結果、地元のカープに入団することになりましたが、カープの捕手は激戦区、正捕手會澤・ベテラン石原・脂ののってきた磯村・期待値の高い坂倉と、中村が1軍で出られるような隙間がありません。昨季は、ファームで112打席に立ち、打.279 出.330 長.394 ops.725の成績を残しています。打席数は少ないものの高卒2年目にしてはまずますの打撃成績ですが、課題は守備でしょうか。1軍出場への壁は高そうです。

 

3位のケムナは高い奪三振力が魅力の右腕。セットアッパーとして一本立ちすれば、ブルペンが大幅に強化されます。


5位の遠藤は今季は先発転向、開幕ローテの最後の1枠を争うまでに成長しています。

2017年ドラフト<福岡ソフトバンクホークス編>

 

この年のホークスの指名は以下の通りでした。
(選手名の横の数値は、2019シーズン終了までの通算成績になります。)
そろそろ、一軍成績だけで語れる年ではなくなってきたので、2軍成績にも言及してまいります。

 

外れ 清宮幸太郎
外れ 安田尚憲
外れ 馬場皐輔
1位 吉住晴斗    0回
2位 高橋礼   173回
3位 増田珠     0安打
4位 椎野新    48回
5位 田浦文丸   10回
育1 尾形崇斗    0回
育2 周東佑京   20安打
育3 砂川リチャード 0安打
育4 大竹耕太郎 154.2回
育5 日暮矢麻人   0安打
育6 渡邉雄大    0回

 

1P=1安打=1回とすると、この年のドラフトはトータルで405.2Pになります。


高橋純平、田中正義と当たりくじを2年連続で引いた反動なのか、3回連続でくじを外してしまいます。1位の吉住ですが、まだ1軍登板はなく、2軍でも目立った成績は残せていません。


2位の髙橋礼は大当たりでしたね。188cmの長身でアンダースローというあまり見たことのないタイプです。2年目に12勝6敗の成績を残し、日本シリーズでも好投、新人王を受賞しました。


3位の増田は松田の後継者としての期待のかかる選手です。まだ1軍では0安打ですが、昨季は2軍で383打席に立ち、打.278 出.342 長.422 ops.764の成績を残しました。今年は1軍に呼ばれることが多くなるかもしれませんね。


そしてこの年は育成1位~4位が支配下登録されたことから、2009年ドラフト(育成枠で千賀・牧原・甲斐を獲得)以来の育成アタリドラフトの期待が高まっています。2位の周東は打率は2割弱ながら圧倒的な走力が魅力の選手。4位の大竹は2年目に開幕から8月初めまでローテを守りました。


そして、1位の尾形と3位のリチャード。二人はまだ2軍でもこれといった成績を残していません(昨季の2軍成績 尾形:0.2回で防御率 27.00、リチャード:14打席で打率.077)。しかしながら、尾形は千賀クラスといわれる直球、リチャードは圧倒的なパワーという突出した長所を買われて支配下枠を勝ち取りました。今年は2軍、いや、一足飛びで1軍での出番に期待がかかります。

2017年ドラフト<阪神タイガース編>

この年のタイガースの指名は以下の通りでした。
(選手名の横の数値は、2019シーズン終了までの通算成績になります。)
そろそろ、一軍成績だけで語れる年ではなくなってきたので、2軍成績にも言及してまいります。

 

外れ 清宮幸太郎
外れ 安田尚憲
1位 馬場皐輔  12回(2球団競合)
2位 髙橋遥人 144.1回
3位 熊谷敬宥   3安打
4位 島田海吏   8安打
5位 谷川昌希  20回
6位 牧丈一郎   0回
育1 石井将希   0回

 

1P=1安打=1回とすると、この年のドラフトはトータルで187.1Pになります。


清宮・安田と高校生スラッガーを指名して外した後、一転して大学生NO1右腕と言われた馬場を指名し、背番号18を与えます。大学生NO1右腕、背番号18と、なんとなく二神を思い出して嫌な予感がしたのですが、まだ1軍でこれといった成績は残せていません。全体的にまとまっているのですが、突出した武器のない印象の投手です。


2位の髙橋は、生え抜きの左腕エース候補。制球に難があるという評判でしたが、さすがは左腕育成に定評のあるタイガースです。昨季は、前半戦は好投するも援護なく、後半戦はバテてコンディションを落とし、3勝9敗の成績に終わってしまいます。直球の質が魅力の本格派左腕ですが、今季はどのような成績を残すでしょうか。

2017年ドラフト<埼玉西武ライオンズ編>

この年のライオンズの指名は以下の通りでした。
(選手名の横の数値は、2019シーズン終了までの通算成績になります。)
そろそろ、一軍成績だけで語れる年ではなくなってきたので、2軍成績にも言及してまいります。

 

外れ 田嶋大樹
1位 齊藤大将 27.1回
2位 西川愛也  0安打
3位 伊藤翔  32.1回
4位 平良海馬 24回
5位 與座海人  0回
6位 綱島龍生  0安打
育1 高木渉   0安打
育2 齊藤誠人  0安打

 

1P=1安打=1回とすると、この年のドラフトはトータルで83.2Pになります。


野手育成に定評のあるライオンズですが、清宮、中村、安田、村上といったスラッガー候補の高校生には目もくれず、左腕の田嶋を1位で指名し、これを外すとさらに左腕の齊藤を指名します。さて、その齊藤ですが、今のところ目立った成績は残していません。2位以降もいいところが(ファームの成績まで見てみても)あまりありませんね…。

2017年ドラフト<横浜Denaベイスターズ編>

この年のベイスターズの指名は以下の通りでした。
(選手名の横の数値は、2019シーズン終了までの通算成績になります。)
そろそろ、一軍成績だけで語れる年ではなくなってきたので、2軍成績にも言及してまいります。

 

1位 東克樹  192.1回
2位 神里和毅 181安打
3位 阪口皓亮   7.2回
4位 齋藤俊介  25回
5位 櫻井周斗  16.2回
6位 寺田光輝   0回
7位 宮本秀明   4安打
8位 楠本泰史  30安打
9位 山本祐大   5安打
育1 中川虎大   5回

 

1P=1安打=1回とすると、この年のドラフトはトータルで466.2Pになります。


他11球団は1位指名で他球団と競合するのですが、唯一ベイスターズだけが一本釣りで東を指名します。そこまで惚れこんで獲得した東、1年目は11勝5敗で新人王のタイトルを獲得し、見事に期待に応えます。ところが2年目には肘の炎症で7登板に留まり、3年目の今季は開幕前にトミージョン手術になりました。残念ながら戻ってくるまで時間がかかりそうです。


2位の神里は1年目から開幕スタメンで起用され、2年目には中堅手のレギュラーを獲得しました。走攻守の全てに秀でていますが、中堅守備では既に球界トップクラスですね。


期待株もご紹介しておくと、8位の楠本は外野手。昨季はファームで289打席に立ち、打.315 出.382 長.455 ops.837の成績を残しています。一軍では初本塁打を代打満塁本塁打で記録しており、今後が楽しみです。また、育成1位の中川は、昨季ファームで104回を投げ、防御率2.25の11勝3敗と無双といえる成績を残しています。今年は1軍でもっと見たいですね。